2024.02.18

2月11日‐2月17日　日記

石丸奈菜美

2月11日(日)　晴れのち曇り

　朝一の回でビクトル・エリセの『瞳を閉じて』を観る。まなざしに射抜かれて放心状態で映画館を出た。映画館で観られてよかったと心から思う。パンフレットを読むのも楽しみだ。
　その後図書館に行って本を借り、あちこちで買い周りを済ませる。いちごが安くて購入した。大事に食べよう。

2月12日(月)　晴れ

　医師の指導で夫と私の出生時の体重を調べると、二人が同じ産院で生まれていたことが分かった。取り上げた医師と助産師も一緒だ。世代も育った場所も違うのに、こんなことがあるのかと大変驚く。声を上げて喜んでいる私を尻目に、夫はひどく冷静だった。交際時、二人の誕生日がちょうど一月違いだったと分かったときも、感激していたのは私だけだったなと思い出す。
　認知症対応型の介護施設で働き始めたころ、私の誕生日である9月21日が世界アルツハイマーデーだということを知って、この業種に携わることは運命だったのかも、と上司に話すと困った顔をしていた。あとから、そりゃそうだよなと恥ずかしく思ったものだ。これまであまり気が付いていなかったが、私は随分と高揚しやすく、ロマンチストなのかもしれない。

2月13日(火)　晴れ

　実家のオーブンを借りてクッキーを焼く。すりこぎで生地を叩き伸ばすときに強かに指を打ってしまった。どうしてか、ポパイの顔が頭を過ぎった。そんなシーンがあったかは分からないけれど、甲板で大工仕事をしそうだよな、などと思う。幼少期、アメリカに住んでいた頃にポパイのアニメーションを観ていたような気がするが、細かいことは思い出せない。今まで見聞きしたことは脳から完全に消えることはなく、忘れたと思っていても記憶の引き出しの奥底にしまわれているだけだ。と何かで聞いたことがある気がするが、たまに、それって本当かもなと思ったりする。
　ここまで書いて、よくもまあこんなにあやふやな状態で書き続けられたなと関心してしまった。きちんと頭の整理になっていそうだ。

2月14日(水)　晴れ

　両親の送迎で6時前に外出すると、朝焼けがとても美しかった。ルー・リードの「Perfect Day」が聴きたくなる。初日の出を観に行く車の中でもかけていた。いつもこれくらいの時間に起きられたらいいのだけれど。

2月15日(木)　晴れのち曇り

　MONO第51回公演『御菓子司　亀屋権太楼』の初日があと1週間に迫ったのでSNSを更新した。あまりに久々で操作の仕方を忘れてしまっていたので、昨日のうちから準備しておいて良かった。
　本番が楽しみだ。だんだんとあたたかくなってきていて、「MONOの本番が近づいているな」と体感する。なんとなく、和菓子には春が一番似合うような気がする。花より団子、という言葉のせいだろうか。
　お腹の子は映画と風呂が好きなのか、映画鑑賞中と入浴中にとてもよく動く。きっと演劇も喜ぶだろうなと、それも密かな楽しみにしている。

2月16日(金)　曇り

　幼少期からこれまでずっと健康オタクなので、常に健康について考えてきたが、妊娠してからというものより深く考えるようになったと思う。
　妊婦は思いの外無理がきかないと知った。睡眠に失敗したり、ストレスを飲み込んだりすると如実に体調に表れる。「無理をしないでね」と声掛けいただくことが多いが、しようと思ってもできないのだなと感じた。無理とも思わないくらいの頑張りでも、次の日1日使い物にならなくなったりする。これまでの自分はなんと健康で恵まれていたんだろうなと悟る。どこも痛くない、悪くない、という状態が普通ではないのだ。分かってはいたつもりだが、体感するとこうも違うのかとハッとした。

2月17日(土)　曇り

　今週は『ボーはおそれている』の公開があったので観に行く予定だったが、現在の体調を考えると「今はアリ・アスターを観ていいときじゃない」と中止にする。毎週、週末は映画を観に行っているので、行かないとなると少し時間を持て余す……かと思えば、なんだかんだとやることがたくさんあり、忙しくしていた。
　両親に会う用事があったので、母に誕生日プレゼントを渡す。母の誕生日は本当は明日なのだけれど、喜ぶ顔を早く見たくて我慢ができなかった。先日、夫にバレンタインデーのプレゼントを渡すときもそうだった。居ても立っても居られないタイプなのだ。つくづく、プレゼントは他人の為にするのではないなと思った。

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