芝居と、私の歩き方

MONO第52回公演『デマゴギージャズ』、大阪・新潟での公演を終え、まもなく東京公演が始まる。
年明けから稽古と準備に打ち込み、慌ただしい日々だった。旅支度も苦手で、荷造りにはいつも苦戦する。そんな中、ツアーの合間の休日にやっとパソコンに向かう時間ができた。
大阪・ABCホールでの5回公演、新潟・りゅーとぴあでの1回公演……本当にあっという間だった。ずっとずっと、どの瞬間を切り取っても、楽しくて仕方がないのだ。
長年、さまざまな指導を受ける中で、「芝居を作るには苦しみが必要だ」と思い込んでいた。悩み、もがき、自分を疑いつくしてこそ、本物の芝居に辿り着けるのだと。確かに、罵られながらも食らいつき、何かを掴んだように感じた瞬間の爽快感は言葉にできないほどの喜びだった。でもというか、だからこそ、というか、いつしか「苦しむこと」が目的になってしまっていたのかもしれない。
そうした環境にいなくても、自らすすんで自分を否定するようになっていた。本来なら好きだから続けているはずの芝居が、「痛みを伴うもの」に変わってしまっていたのだ。
何年か前、土田さんに「まるちゃん、今、芝居してて楽しかったでしょ。楽しんでやっていいんだよ」と言われた。その言葉がすとんと心に落ちた。ああ、私はずっと、自分を自分で傷つけていたんだーーそう気づいた。
それ以来、芝居に対する意識が変わった。苦しむことが芝居の本質なのではなく、純粋に「楽しいもの」として向き合っていいのだと。
今の時代になってもなお、ひどい侮辱を受けることがある。かつての私だったら、その理不尽に気付けず、必要以上に自分を責めて耐えきれなかったかもしれない。けれど、どんな経験をしても、100%の信頼と安心を持って帰ることができる場所がある。それがどれだけ貴重でありがたいことかを改めて感じている。厳しさだけが正解ではない。芝居を長く続けるためには、信頼と安心が必要だ。のびのびと芝居をできる今、私はしあわせでいっぱいだ。
今週末からの東京公演・そして豊橋・岡山公演ではどんな『デマゴギージャズ』が生まれるのか。今から楽しみで仕方がない。ご都合のつく方は、是非劇場に足をお運びください。公演情報はMONO公式ホームページに掲載されています。