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東京公演を終えて

石丸奈菜美

 MONO第52回『デマゴギージャズ』の東京公演が終了した。まだ豊橋・岡山の公演が控えているものの、最も長く滞在したツアー先での公演を終え、「ああ、もうすぐ千秋楽なんだな」という感覚がじわじわと心に広がる。今日から4日間のお休みをいただいているので、この貴重な時間をどう過ごすべきか考えている自分がいる。
 東京公演でも連日、お客様のあたたかい反応に包まれて充実した日々だった。舞台に立つ喜びと高揚感は何物にも代えがたい。同時に、体と心には大きな疲れが残る。緊張の糸が途切れた瞬間、どっと疲れが押し寄せてくるのは、役者あるあるだろう。

 今日は久しぶりにゆっくりと夫と子と三人で過ごした。東京公演中も、育休中の夫が子の面倒をみてくれていたが、公演前の緊張や公演後の疲れで、なかなか家族と心から向き合えていなかったように思う。
 久しぶりに朝から晩まで家族で過ごし、子の成長に心から驚いた。つい先日教えたことを目を輝かせて披露する姿に、胸が熱くなる。「賢いなあ」という言葉が、今日はどれだけ私の口からこぼれ落ちたことだろう。
 普段の何気ない時間(一緒にご飯を食べたり、お風呂に入ったり、絵本を読んだり)が特別な時間に感じられた。育児は大変なことも多いけれど、子を向き合う時間は、私にとって最高の充電時間になっている。
 今日は家事と買い物をして、新しく購入したベビーカーで、家族で散歩に出かけた。新しいベビーカーは驚くほどコンパクトになり、押し心地もなめらかだ。子も気に入ったようで、景色を楽しそうに眺めていた。
 家事も夫と分担しながら進めた。ツアー中に溜まった洗濯物を片付け、水回りを特に綺麗に掃除する。家の中が整うと、心の中も整理されていくような気がする。

 掃除をしながら、ふと考えた。出産前は、「子どもができたら芝居の幅が広がるのかな」とぼんやり想像していたことを。実際に経験してみると、自分の中で何かが変わったことは確かだけれど、それは単純に「良くなった」というわけではない。ただ違った視点や感覚を持つようになった。
 演技という営みは、様々な人生経験の積み重ねの上に成り立っている。子育てもその一つにすぎない。役者それぞれが自分だけの人生をあゆみ、その中で培った感覚を舞台に持ち込む。だからこそ、一人一人の演技が唯一無二のものになるのだと思う。
 
 残りの休息時間、夫と子と三人で過ごす時間を大切にしたい。あまり予定を詰め込まず、流れに身を任せてみようと思う。
 子と公園に行ったり、家族でお出かけしたり。パン作りにもこっそりチャレンジしてみたいという密かな計画もある。こうした何気ない日常の中で、静かに、でも確かに力を蓄えていきたい。
 心と体を十分に充電して、豊橋・岡山公演では、また一歩深まった『デマゴギージャズ』を観客の皆さんと共に創りあげていく喜びを感じていきたい。


【豊橋公演】
日時:2025年3月15日(土)・3月16日(日)
会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース

【岡山公演】
日時:2025年3月20日(木・祝)
会場:岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場

詳細・チケットのご購入はMONO公式サイトhttps://c-mono.com/stage/にて。

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ABOUT ME
石丸奈菜美
石丸奈菜美
俳優
1988年生まれ・神奈川県出身。幼少期の1-4歳をミシガン州デトロイトで過ごした経験を持つ。帰国後、子役としてデビュー。 映画、CM、バラエティなどで活動を続け、2018年に京都を拠点とする劇団・MONOのメンバーとなる。2024年4月に第一子を出産。育児の合間にエッセイを執筆し、ブログを通じて日常の小さな発見や舞台裏の思いを綴っている。MONO第52回公演『デマゴギージャズ』では、母となって初めての舞台に挑戦中。
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